今年で25回目を迎える「鶴岡音楽祭」に参加するために、山響は昨日から鶴岡市に来ています。山形から鶴岡までは山形自動車道と自動車専用道路(国道112号線月山道路)を使っておよそ100キロほどの距離です。昨日はこの冬一番の寒気で、月山道路の頂上付近で運転中何度も猛吹雪によるホワイトアウトに見舞われ、視界が極めて不良な中普段の倍の時間を要し、何とか鶴岡市に到着しました・・・。リハーサルは、音楽祭に出演するソリストの皆さんが庄内空港が吹雪で閉鎖されたために新幹線で東京〜仙台〜鶴岡と陸路での移動を余儀なくされ、オーケストラと合唱のみでリハーサルを進め、一時間ほどで終わってしまいました。一体ソリストの皆さんは何時間移動にかかったんでしょうか・・・お疲れさまです・・・。
音楽祭は、「雪の降る街を」で知られる中田喜直さんの作品を中心に、市内の子供たちや高校生、一般の合唱団やソリストをゲストに、多彩なプログラムで構成されています。「雪の降る街を」は、鶴岡市の冬の情景をモチーフに作曲されたと言われており、中田さんも生前、よく鶴岡を訪れ、この音楽祭に出演したことも多くありました。今日はまさにタイトル通りの雪景色です。季節感あふれる中田喜直さんの美しい音楽を私も皆さんと共に楽しみたいと思います。
Severe cold・・・「極寒」という意味です。つい先ほどの天気予報では、現在、北海道上空の寒気は世界で1番寒いとか・・・。今日は新潟で80センチの積雪があり、交通機関はマヒ状態のようでした。札幌では昨日から雪祭りが始まり、この寒波のおかげで雪像が美しく保てるそうです。山形でも昨日に引き続き気温が下がりました。明日はこの冬1番の寒さだそうで・・・山響は明日、鶴岡に移動してリハーサル、そのまま鶴岡市内に宿泊してあさっては長年行われている「鶴岡音楽祭」の本番日です。明日は鶴岡に無事にたどり着けるのでしょうか・・・不安でもあり運転が楽しみでもあります(^_^;)
暦では立春なのに、2月に入ってからは寒さが増しています。昨日の山形は最低気温がマイナス6度になり、街には鋭い寒気が漂っていました。今日は北海道の占冠(しむかっぷ)ではマイナス34度を記録しましたが、私が子供の頃の名寄市は1月〜2月の間にマイナス30度以下の気温を記録する事が10回以上はありました。当時は学校も防寒建築ではないですし、暖房設備も石炭ストーブだけで、教室から廊下に出ると外と同じように寒かったことから、30度以下の日は休校措置がとられていました。また、25度以下30度未満の場合は始業が2時間遅れ、20度以下25度未満の場合は1時間遅れとなり、朝6時のNHKニュースでの気象状況を見るのを楽しみに(!)していた事を思い出します。最近は地球温暖化の影響でしょうか、昔ほど気温が下がらなくなってきたようですが、ときどき冷たい空気を感じると故郷の空を思い出す事が今もあります・・・。
福岡から戻りました。日本国内でもこれほど距離が離れると気候をはじめさまざまな違いがあって楽しく過す事ができました。九州交響楽団、広島交響楽団のユニオンによるオーケストラ協議会の西日本地方会議も、限られた時間の中で良い議論が出来たと思っています。会議翌日はオフだったので、太宰府天満宮を観光に行き、受験を控えている生徒達のためにお守りを買ったり、のんびり過しました。
さて、少し時間が過ぎてしまいましたが、「村川千秋の世界」はとても素晴らしい演奏会でした。2日間とも現在の山響のベストパフォーマンスだったと思いますし、これほど全員の技量と精神力が高まったステージはそうあるものではありません。フィンランディアでの厚い響きと色彩感、ヴァイオリン協奏曲で千尋さんが示した集中力とぐんぐん伸びてゆく音楽、そしてベートーヴェンではまさに「爆演」とでも言うようなエネルギー・・・。ステージの上から客席をみると、かつて理事として山響を支えて下さった村川氏と同世代の方々や、古くからのファンの方々がたくさん見えました。皆さん、とても満足そうな表情をされていたのが印象的でした。また、気付いたかたもいらっしゃったかも知れませんが、第1ヴァイオリンのエキストラにかつてのコンサートマスターである堀内希代子さん(旧姓・大澤)も参加されていて、往年と変わらない美音を奏でられていました。
先日の続きですが、ベートーヴェン5番の第4楽章のトランペット、トロンボーンの書き方について演奏しながら考えていました。当時はトランペットは現在のようなヴァルブがなく、自然倍音のみで演奏していたために管の全長が現在の倍ありました。つまり、トロンボーンとトランペットは同じ長さだったのです。山響で所有しているオリジナル楽器を見ると、トロンボーンはアルト、テナー、バスの3種類で、ベートーヴェン5番でもこの組み合わせで書かれています。トランペットは一台の楽器で管を入れ替える事で移調に対応するようになっていて、トロンボーンのテナーと全長が同じ長さで、管の径も同じです。整理すると、管が短い方からアルトトロンボーン、2本のトランペット、テナートロンボーン、バストロンボーンという順番になります。現在の楽器では2本のトランペット、アルト、テナー、バスという順になり、径は特にトロンボーンで顕著に太くなり、ベルもとても大きいです。
問題になる134小節めからは、現在の楽器で指示通りのフォルテで演奏するとトランペットが出過ぎてしまい、バランスをとるのが難しくなりますが、オリジナル楽器ではトランペットとトロンボーンが近い響きになり、2つの楽器と言うより5本の同族楽器としての音色が出るようです。また、ホルンがナチュラルホルンであればさらに金管の響きの一体感が出るでしょうし、ティンパニーとともに絶対的な存在感というか、効果が現れると考えられます。ベートーヴェンが5番の第4楽章で教会の楽器であったトロンボーンを敢えて使ったのは、宗教曲で使われる楽器のイメージが強い、すなわち「死生観」を持つトロンボーンと勇壮なトランペット、ティンパニーを組み合わせる事で、自らに振りかかるさまざまな困難を乗り越え、「死」をも超越した世界への到達を目指す強靭な心があったからではないでしょうか。しかしこれは同時に教会の存在、つまり「神」の否定に繋がりかねない事でもあり、当時のヨーロッパ社会へでは今よりも大変なリスクを伴うものでもあったでしょう。それほどまでにベートーヴェンは音楽を通して強いメッセージを送り、今もなおその精神が受け継がれている、と解釈する事も間違いではないと私は思います。29日の村山市民会館で万雷の拍手を浴びた村川氏は、客席に向かい「山響は永遠です!」と述べ、会場はさらなる感動に包まれました。音楽は人を感動させるだけでなく、困難を乗り越え一つの事を成し遂げ、人生の目標に到達するという素晴らしい仕事をさせるだけの力があるものだ、と強く感じた瞬間でした。
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