10月最後の仕事は、明日(31日)宇都宮で行われる「とちぎ音楽祭」への出演です。ツアーの連続で疲労が残るオーケストラですが、今日は元気いっぱいの飯森音楽監督の指揮のもと、明日のプログラムのリハーサルが天童市内で行われました。プログラムはモーツァルト交響曲31番「パリ」、ヴァイオリン協奏曲第5番、そしてベートーヴェンの交響曲第7番です。牧さんが卒業したあとの1番クラリネットの席には、エキストラ奏者が加わりリハーサルが始まります。ベートーヴェンは音楽の持つ大きな推進力にいつしか疲労も忘れ、集中力が増してくるのがわかります。モーツァルトでは久しぶりにナチュラルトランペットを演奏しますが、最近購入したナチュラルトランペット用のマウスピースがとても吹きやすく、新たな響きを創り出せそうな予感がします。明日はツアーの多い今月の締めくくりのような「乗り打ち」(戦前から使われている舞台関係者の業界用語で、「当日に現地に乗り込んで、興業を打つ」が謂れです)ですが、栃木県では初めてとなる山響の演奏会です。しっかりキメて来ようと思います。
日別アーカイブ: 2010 年 10 月 30 日
A memory
旅行続きの10月も明日でおしまいです。今週は北東北を回りましたが、忘れられないツアーになりました。
1986年に山響に入団以来、約25年にわたってクラリネット奏者として活躍された牧 慎一さんが、28日の本番を最後に山響を退職されました。1980年代中期は、国からの補助金が打ち切りになった事を始め、山響には苦難の時代でした。私が入団した1984年も、補助金を受けるために当時の宮城フィルと書類上は一つの団体として申請を行うという離れ業を駆使したりしていましたし、(今なら仕分け確実かも・・・)83年には村川千秋氏に代わり、渡部勝彦さんが新たな常任指揮者として就任するなど、1972年の創立以来続いてきた流れが新たな方向に向かい始めた時期でした。この頃、オーボエの竹谷 智さん、私、首席フルートの足達祥治さん、トロンボーンの長瀬伸太郎さん、オーボエの斎藤真美さんなどが相次いで入団し、管楽器の顔ぶれが変わってゆく中、牧さんも入団されました。彼はいつもリラックスした雰囲気で、音楽の流れに体を乗せるようなしぐさで伸びのある美しいサウンドを奏で、山響の響きにも大きな影響を及ぼしました。それだけにコンディショニングや自らの演奏には大変シビアで、満面の笑顔の中に秘められたミュージシャンとしての鋭い姿勢は、すぐ近くで演奏している私にとっても感じるものはたくさんありました。牧さんは村川さんの時代、1992年3月の定期と今年6月のモーツァルト定期でそれぞれモーツァルトの協奏曲を演奏され、晩年のモーツァルトが持つ微細な感情をとても素晴らしく表現していたのが印象に残ります。これからはオーケストラを離れて音楽家としてさまざまなご活躍をされる事でしょう。これまでのご活躍に心より敬意を表すとともに、今後の人生がますます実りの大きなものになるよう、心から願います。本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。