先日試乗したVW The Beetleについて、続きです。
ご存じの方も多いと思いますが、VWという会社は1938年に当時のナチスドイツが立ち上げた「国民車構想」(Volksは民衆、Wagenは車という意味のドイツ語です)がその始まりで、ヒトラー総統の命令により天才エンジニア、フェルディナント・ポルシェ博士が設計し、自らの研究所で完成させた車がVW type1、後のBeetleです。また、ポルシェ博士に車を設計させると共に、全ドイツに張り巡らせた「アウトバーン」と呼ばれた高速道路を整備する事で自動車の普及を促進させる政策をとります。政府はVWを買うために給料からの天引き制度を奨励し、労働者はこれにこぞって応募しますが、戦争が始まってしまったため、VW は軍需工場となり、天引きした購入資金は軍事費になってしまい、実際に車を受け取ることができたのはほんの数人とも言われています。戦争ではヒトラーの指示でポルシェ博士の設計したVWは、戦車や軍用車としてその高性能ぶりを発揮しドイツ軍を支えますが、敗戦後工場はイギリス軍に接収され、ポルシェ博士は戦犯として獄中に送られてしまいます。その後イギリス軍は接収したVWの工場を「利用価値なし」と判断し、ドイツに返還します。そして1945年、ヒトラーの国民車構想は新たにVWType 1として再開発され、たちまち世界中で成功してゆきます。また、1947年にはポルシェ博士も釈放されますが、獄中生活で健康を害し、息子のフェリー・ポルシェが陣頭指揮を執り開発したポルシェ356とVWの成功を見届け、1951年に75歳で亡くなります・・・(続く)
写真:2008年に仕事でドイツに行った際にVW本社のあるヴォルフスブルグに行き、アウトシュタットと呼ばれるVWのテーマパークを見ることができました。この写真は奥のグレーの車が1938年の試作車1号、赤いのが2号車、そして手前の黒いのが生産型です。