Oak

三笠宮寛仁親王が逝去されました。「ヒゲの殿下」として国民にしたしまれた寛仁親王は、生涯にわたって福祉や文化、スポーツ振興に力を注がれたほか、剛直で豪放磊落、しかし繊細という魅力あふれるお人柄で、多くの功績を残されました。それについては報道などで数多く伝えられていますので、あらためて記すことはしませんが、殿下と音楽について多くの方がご存じではない点についてだけ、述べさせていただきたいと思います。寛仁親王は、そのお印である「柏」(Oak)にちなんだ「柏朋会」という慈善団体の会長を務められ、毎年東京都内で「愛のコンサート」を長い間開催されてきました。山響の私たちもそのことは存じていませんでしたが、昨年の震災を受けて、殿下から「東北の音楽家を呼びたい」とのお申し出があり、柏朋会の音楽監督で私たちとも長いお付き合いのある神津善行先生を介して私たち山響が昨年10月26日に「愛のコンサート」に出演させていただくことになり、文化庁公演のツアーの中、東京のメルパルクホールで神津先生の指揮の下、殿下に演奏を聴いていただくことができました。当時すでに体調がおもわしくなかったにも関わらず、身を乗り出すように山響の演奏を聴いていただき、終演後のレセプションでは22時過ぎまで楽団員一人一人と言葉を交わされ、写真撮影にも快く応じていただいたり、楽員一同大変感激しましたし、私も個人的にお話しさせていただき、そのお人柄と文化を愛する姿勢に大変感銘を受けました。殿下は山響の演奏を心からお褒め下さり、「ぜひまた聴きたい」とおっしゃってくださいました。残念ながらそれはもう叶いませんが、嬉しそうに微笑む殿下のお姿は私たちも決して忘れることはありませんし、殿下が願った「多くの人々に幸せを」という理念を私たち音楽家も引き継いでゆくことが、文化人としての大切な使命ではないかと感じています。あらためて謹んでご冥福をお祈りいたします。寛仁親王殿下、ありがとうございました。


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