ゲネプロが終わりました。ベートーヴェンの5番は「運命」と呼ばれていますが、これはベートーヴェンが名付けたものではありません。「運命はこのように扉を叩く」と言ったとも伝えられていますが、その真偽も確実なものではないようです・・・。今では「運命」と呼んでいるのは日本くらいかも知れませんね。たしかに、音楽から伝わる内容は、いかにも「苦難を乗り越え勝利に向かう」的な雰囲気があり、70年代にヴィヴァルディの「四季」が大ブームになったように標題音楽を好み、そこに自己の感情を投影する事が多い日本人にとってこの「運命」は最も親しみやすい音楽なのかも知れません。
ご存知のように、ベートーヴェンはその生涯に9曲の交響曲を残しました。初期の1番、2番はハイドンやモーツァルトの影響が窺えますが、3番からその作風は大きく変わり、古典派のセオリーに収まりきらないスケールの大きな音楽になってゆきます。特に5番ではそれまで行われる事のなかったさまざまな試みを盛り込んであり、交響曲では初めて使われた3本のトロンボーン、コントラファゴット、ピッコロ(共に第4楽章から)が色彩感を大幅にアップさせていますし、第2楽章冒頭はヴィオラとチェロが旋律を奏でることで始まりますが、ヴィオラが重要な旋律を担当することも当時は大変珍しい事でした。
トロンボーンという楽器は、教会の中でオルガンと共に合唱の伴奏をする事が主要な役割で、オーケストラに登場するのはレクイエムなどの宗教曲のみでした。また、当時珍しい楽器のコントラファゴットは、室内楽や軍楽隊で低音パートを補強していましたが、第4楽章で登場するとチェロ、コントラバスに加わり、低音の音色をよりリアルなものにしています。ピッコロも第4楽章で数ヶ所ソロ(329小節〜332小節)がありますが、これも大変に珍しい事でした。
トランペット奏者から見ると、第4楽章で3本のトロンボーンが入ってきてからは、2本のトランペットが2オクターブのユニゾンを吹く中に3本のハーモニーが挟まるようなところが数ヶ所あり(こんな書き方は今でも誰もしません)、私が演奏する第2トランペットと第3トロンボーンが全く同じ高さの音を演奏している箇所がわずかですがあります。(134小節目〜140小節まで)
このように、ベートーヴェンが試みた数々の斬新な(当時としては先を行き過ぎていた感もあります)手法、あるいは徹底した拘りは、一体何を伝えようとしていたのでしょうか・・・。
(つづく)
お疲れさまでした!
2日間、とても楽しく聴かせて頂きました。
今頃のコメント、遅くなって申し訳ありません。
ホントですね、
134小節からのTrumpet 2ndが、とても低いうえにフォルテシモの指示があります。
Tromboneだとこの音域でフォルテシモは効果的だと思いますが、
Trumpetをここに配置してどのような効果を得たかったんでしょうね。
137小節からの、Horn2本といっしょにやっていることなら納得できますが…。
2本ずつの管楽器の使い方が面白いです、
というより、オーケストラが面白いです。
うにさま
いつもありがとうございます。ベートーヴェン、演奏するたびに寿命が縮まるような気がします(+_+)いつか機会があったらナチュラルで演奏してみたいです。でも、他のオケよりナチュラルを
頻繁に使っているので、モダンを演奏していてもオリジナルのイメージはありますね。今年はシューマンをナチュラルで演奏する予定なので、楽しみです。