さて、ピッチの続きでした。アメリカのオーケストラ奏者が演奏するトランペットの音に魅せられた私は、色々なレコードを集め、金管楽器のサウンドを聴きながら、どうしたらあのような音が出るのか悩みながら練習に励んでいました。そうするうちに金管だけでなく木管楽器の音にも国ごとで大きな違いがあることに気が付きました。それは特にオーボエやバスーンなどのダブルリード楽器で顕著で、例えばベルリンフィルとフィラデルフィア管を比べるとまるで別の楽器のように聴こえます。トランペット奏者としてはアドルフ・ハーセスが私にとって最も尊敬する奏者ですが、自由な吹きっぷりでオーケストラに色彩感を与えたフィラデルフィアのギルバート・ジョンソンも大好きで、この二人が子供の頃からの目標になりました。そして、そのフィラデルフィア管弦楽団の木管セクションも大好きになり、当時の首席オーボエ奏者だったジョン・ド・ランシーの演奏からも音楽的なアイディアをたくさん得ました。一方、多くの人が絶賛するベルリンフィルを始めとするドイツ語圏のオーケストラはどうしても管楽器の音が私には抵抗があり、特にロータリートランペットの音が好きになれず、オーボエもヴィブラートがかかりすぎていて甲高く聴こえ、ホルンはトランペットのような明るい音に感じ、どうも好きにはなれませんでした。それと、何と言ってもドイツのオーケストラはピッチが高く、レコードなども最後まで聴いていられなく、自然と敬遠するようになってゆきました。(つづく)