明日から3月です・・・1日から4日までは文化庁公演「本物の舞台芸術体験事業」の公演のため、秋田県、宮城県を廻ります。といっても、新規の公演ではなく、昨年秋に新型インフルエンザのために公演が延期になった分です。例年ならば追加公演で新規の予定が組まれるのですが、致し方ないところですね。
明日からの公演を行う学校は、昨年秋に事前のワークショップを行いましたが、しばらく時間が過ぎてしまったので生徒達はワークショップの内容を覚えていてくれるか心配です・・・でも、きっとオーケストラの響きを楽しんでくれると思います。公演会場の体育館、寒いでしょうね・・・・。
(写真は昨年秋に行われたワークショップの一コマです)
春の気配・・・気温がだんだん高くなり、日差しの色あいがが少しづつふえてゆくように感じます。もう少し寒い日もあるのでしょうが、時の流れは春に向かっているようですね。もうすぐ如月も終わり弥生とよばれる草木が生い茂る季節がやってきます。緑と風のハーモニーが静かに美しく街に流れる・・・待ち遠しいですね。
ヴァンクーバーオリンピックでのアスリート達の素晴らしいパフォーマンスに圧倒される毎日が続いています。私は極寒の北海道内陸部で育ったので、ウインタースポーツは大好きですし、得意です。小さい頃は冬の遊びはスキーかスケートで、毎日のように楽しんでいました。今から38年前の1972年2月にはアジアで初めての冬期オリンピックが札幌で開催され、ジャンプノーマルヒル(当時は70m級と言っていました)での日本チームのメダル独占に日本中が熱狂した事を昨日のように思い出します。この頃、私は小学校6年生で、毎日テレビに食い入るようにして競技の中継を観ていました・・・この札幌オリンピックでは、ジャンプチームの他にメダルを期待されていた選手が数名いて、その中でも最も金メダルに近いと言われていたのがスピードスケート500メートルの鈴木恵一選手でした。彼は1960年代後半において世界最強のスピードスケーターで、最近の選手に例えると清水宏保さんのイメージに近いものがありました。1968年から1970年まで、数度にわたり世界新記録を更新し、札幌オリンピックではピークを過ぎていたものの、依然として有力な優勝候補でした。札幌大会の決勝では、芸術といわれたコーナーワークでまさかのミスが出て、メダルは逃しましたが、忘れられないスケーターの一人でした。現在まで続く日本のスピードスケートの輝かしい栄光は、鈴木恵一が源流であると言えます。
ところで、スピードスケートのスタートは、今回のヴァンクーバーで銅メダルに輝いた山形出身の加藤条治さんも大変ナーヴァスになっていたほどですが、38年前の札幌オリンピックで初めて国際大会を見た小学生の私にはどうしても分からない事がありました。それは、選手がスタートラインについて、スタートピストルを放つ前にスターターが発する合図のような掛け声でした。今は「ready」と言ってからスタートピストルを放つのですが、当時は少し違っていて、何と言っているのかどうしても分からなく、何度聴いても日本語の掛け声のように聴こえました。それは、「おんやまー!」(”お”に強いアクセントをつけていました)と言っているようで、友達同士でも「なんて言ってるんだろう」と毎日話題になっていました。結局、意味は分からず仕舞いで、スケート場でスピードスケートのスタートの練習をする時にも、「おんやまー!」と言ってからスタートピストルを打っていました。
それから長い時が経ち、そのスタートの事もすっかり忘れ、スケート場にも行かなくなり、音楽家としての毎日を送る中、確か1994年のリレハンメル大会だったと思いますが、スピードスケートをテレビで観ていた時、突然にスターターの言っている事がはっきりと聴き取れたのです。その時、札幌オリンピックでの疑問が一瞬にしてよみがえり、そしてようやく私はその言葉の意味を理解したのです。私が「おんやまー!」と日本語のように聴いていたのは、英語で「On your mark」つまり、「位置について」だったのです。なぜ、英語として聴けなかったかは分かりませんが(私の耳か、当時のテレビ音声の音質か、あるいはスターターの方の発音か・・・)やっと長い間の疑問が解けた瞬間でした。札幌オリンピックの競技は、その多くがYouTubeで見る事ができますが、スピードスケートを見ると、やはり「おんやまー!」」と言っているように私には聴こえます・・・・・(^_^;)
あと数日、アスリート達の素晴らしいパフォーマンスを楽しむ事ができますが、どのアスリートにとっても「On your mark」はスタートの合図の言葉だけではなく、彼らの人生においてさまざまな意味を持つ言葉なのではないでしょうか・・・・。
神奈川フィルとの合同演奏会がたくさんの聴衆を得て無事に終了しました。どの曲も良い演奏だったと思いますし、2つのオーケストラの個性がそれぞれの普段のサウンドを超えて新たな響きが生まれていたように感じました。他のオーケストラと合同の公演は稀ですが、近年では「せんくら」での仙台フィルとの共演、飯森さんが音楽監督を務めていたヴュルテンブルグ・フィルの山形公演での合同演奏会などがありました。今回は初めてのホールで新たなオーケストラとの出会い・・・こういう演奏会も素敵ですね。
昨日の終演後は東京で活躍している教え子たちと軽く飲み(私はノンアルコールでした・・・)今日は午前中買い物をして山形まで帰ってきました。首都高などの渋滞もなく、ちょうど4時間半の行程でした。明日からは山響はオフですが、レッスンやユニオンの仕事がたくさん待っています・・・・
今週は横浜みなとみらいホールで18日に開催される「みなと×みちのく オーケストラの描く未来」のため、昨日から横浜に来ています。この「みなとみらい」地区は、私が学生だった頃はまだ未開発でしたが、今ではランドマークタワーをはじめとするベイエリアの絢爛豪華(古い表現ですね・・・)がとても美しく、東京とは違った雰囲気があります。「みなとみらいホール」は1998年に開場されたワインヤード式のコンサートホールで、サントリーホールなどと同じくステージの四方に客席があります。テルサのようなシューボックス型に比べ、音が拡散しやすいと言われていますが、とても音響は良く、音も出しやすいホールです。
今回は神奈川フィルとの合同で、全く個性の違うオーケストラ同士ですが、飯森さんの指揮のもと、すぐに響きがまとまり素晴らしいサウンドが生まれています。プログラムはプロコフィエフの交響曲第一番、ストラヴィンスキーの火の鳥(1919年版)に挟まれるように現代曲が2曲演奏されます。とても繊細に書かれている音楽で、近、現代の音楽を比較しながら楽しめる良いプログラムです。また、このホールの職員として2つのオーケストラのマネージメントやさまざまな仕事を仕切っているのは山形出身のかつての生徒で、立派に成長した仕事ぶりを見てとても頼もしさが伝わってくるとともに嬉しさが込み上げてきました。明日は素晴らしいコンサートになるでしょう!
「アマデウスへの旅」の18世紀から21世紀に戻り、今日は明日から横浜で行われるリハーサルとコンサートのための新曲の準備に追われた一日でした・・・。パート譜自体は難しいものではないものの、音楽の全体像が見えにくく、スコアも音符が小さくて読み込みが大変でした・・・あとは明日からのリハーサルで対処するしかないです(T_T)
もしかしたら、モーツァルトの音楽も、当時は斬新ゆえにオーケストラ奏者を悩ませたのかも・・・そんな事ないか・・・。
2日間のモーツァルト定期が終わりました。今回の白眉は弦楽器の美しくしなやかな響き、それと首席ホルンの八木さんの素晴らしい演奏・・・これに尽きますね。そして今日の「響ホール」の素晴らしさ!ホールの空気が楽器の響きにとても敏感に反応しているのがよく分かります。このホール自体が大きな楽器のようですね。飯森さんも話していましたが、このホールでもう少し演奏の機会が増えると嬉しいと私も思います。演奏後、外に出ると少し長くなった午後の風から、モーツァルトの音楽のような春の予感を感じる事ができました。良い一週間でした。
3日間のリハーサルとゲネプロが終わりました。昨日はテルサでリハーサルでしたが、レコーディングを行いながらでしたので、多少ナーバスな雰囲気が漂っていました。全曲演奏で降り番のない弦楽器の皆さん、本当にご苦労様、お疲れさまですm(__)m
今日のゲネプロもレコーディングで、時間ぎりぎりまで念入りな演奏が続き、良い音が録れたと思います。今回は客演コンサートマスターに森 悠子さんをお迎えして、古楽奏法に新しいアプローチを得ることができ、いつもの澄んだ響きがさらに美しいものになっています。また、ソリストの首席ホルン奏者、八木健史さんの演奏も伸びやかな音色と自然なフレージングで、モーツァルトが親友であったホルン奏者のロイドゲープのために親しみを込めて作曲した楽しく優しい雰囲気が伝わってきます。今日、明日(余目)の本番が楽しみです!
2月13日(山形テルサ)、14日(余目響ホール)で行われる「アマデウスへの旅」のリハーサルが今日から始まりました。今回は前半が弦楽合奏、後半は山響首席ホルン奏者の八木健史さんをソリストに、モーツァルトの傑作の一つであるホルン協奏曲第三番と、初期の交響曲の中でも軽やかな響きを持つ交響曲ニ長調 k95を演奏します。管楽器はフルート、オーボエ、ファゴット、クラリネット、トランペットが出番で、ホルンはソリストの八木さん以外の3人は「降り番」と呼ばれる事実上の休日です。また、通常トランペットとセットで使われるティンパニーも降り番で、交響曲はオーボエ2、フルート2、トランペット2、ファゴット1という編成をとり、2本のオーボエは第二楽章がお休みで、その楽章だけ2本のフルートが演奏するという珍しいシフトになります。これは、当時の小さなオーケストラではフルートとオーボエを一人の奏者が持ち替えて演奏していたことによるもので、モーツァルト以前の作曲家はしばしばこのような手法を使いました。それでも、オーケストラの色彩感を豊かに創り上げるモーツァルトの才能はやはり素晴らしいものがあります。リハーサルはこまやかにニュアンスを付けてゆく丁寧なものですが、音楽の楽しさにあふれた時間でした。明日も楽しみです。
今日は欠員になっているヴァイオリンとチェロの新たな奏者を雇うためのオーディションが山形県民会館で行われました。オーケストラの世界では、メンバーに欠員が出た場合や増員などで新たなメンバーが必要になった場合に、オーディションと呼ばれる採用試験を行います。通常は試験日の数ヶ月前に音楽関係の雑誌や音楽大学などの教育機関に求人広告を出します。試験はほとんどの場合一次審査、二次審査の二段階で行われ、オーケストラから提示された課題曲と、いくつかのオーケストラレパートリーから重要な部分を抜粋したものを演奏します。審査は指揮者を含む全楽員の投票で合否が決定され、その後数ヶ月から一年ほどの試用期間を経て本採用になります。それぞれのオーケストラで若干の違いはあるものの、概ねこのような流れでオーディションは行われます。一般企業との最も大きな違いは、職員(楽団員)全員で試験の採点を行う事ですね・・・もちろん、最終的には雇用主である「社団法人 山形交響楽協会」の理事長の名において採用が決定されるのですが、採用試験の採点を楽員全員で行うのはオーケストラだけかもしれません。
「オーディション」という言葉は、演劇や音楽など、動きや演奏を伴う能力を審査する時に使われる用語で、筆記試験では使われません。英語表記では「Audition」ですが、類似語に「auditorium(オーディトリアム・公会堂」「audio(オーディオ・音響機器)」などがあります。それぞれの単語にある「audi」はラテン語で「聴く」という意味で、このように英語にも引き継がれています。ちなみに、ドイツの自動車メーカーで、フォルクスワーゲングループの一つである「Audi(アウディ)」も同じ意味ですが、この社名の由来は創立者の名前がアウグスト・ホルヒという人で、このホルヒ(horch)をラテン語に訳すと「Audi」となる事によっています。
私が山響のオーディションを受けたのはもう27年も前の事です・・・当時、リハーサル会場は山形テレビの大きなスタジオで、オーディションもそこで行われました。とても緊張しながら演奏したことを思い出します。今日もたくさんの受験者の緊張した様子を見ましたが、合否に関係なくこの経験が音楽家としての大きなステップの一つとなってくれる事を願わずにはいられません。
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