第201回定期が山形、酒田とも無事に終了しました。どちらも美しい響きを作る事ができたのではと思っています。指揮のドヴォジンスキ氏は日本初登場でしたが、私たちとの相性も良く、日本の他のオーケストラともこれからたくさんの良い仕事を重ねて行く事が想像できます。山響に客演した指揮者の中ではたぶん最も若い指揮者(私はこれまで30歳の指揮者では演奏した事がありません)ですが、ぜひ再度の登場に期待したいと思います。
個人的には今回は第3トランペットを担当しましたが、このパートは第1、第2と同じ動きをとる部分と、トロンボーン、チューバなどとユニット化している部分とがあり、多様な音色と演奏法が求められます。特にシベリウスとエルガーではそれが顕著で、わずかではあるもののソロもあり、第2トランペットを演奏している時とはまた違った世界があり、楽しく演奏できました。
今日は東京でユニオン関係の会議があるために、7時12分発の山形新幹線に乗車中です。車窓から見える一面真っ白な景色がとてもきれいです・・・最近導入された新型車両には各座席にACコンセントがあり、MacやiPhoneのバッテリー残量を気にせずにいられるのが嬉しいですね。
3日間のリハーサルとゲネプロも終わり、とても美しい響きができ上がりました。とくにシベリウスは数日前から積もった雪で覆われた街の風景にぴったりな感じがします。また、難曲の一つであるエルガーは、マエストロの的確な指揮により大変演奏しやすく、細かなニュアンスがよく表現されています。中でも第9変奏の美しさ!!
ゲネプロが終わってからは気持ちを切り替えたいので、たいていはホールから出て一人で外にいます。降りしきる雪を見ると故郷の北海道にいるようで、冷たい風が懐かしく心に暖かく感じます。この空気のような透明な音が出せたら・・と思います。
例年に比べ暖かだった12月も、昨日から寒さが増してきました。庄内地方では大雪警報が出ていて、週末まで雪が降り続けるそうです。日曜日に予定されている庄内定期に影響しないと良いですね。
さて、今日から201回定期のリハーサルが始まりました。楽員の表情からは来年度への不安が読み取れますが、集中して音楽に取り組まなければなりません。指揮は日本初登場で、ポーランドの新星と謳われるミハウ・ドヴォジンスキ氏で、ソリストを立てずにオーケストラ曲のみの内容の濃いプログラムです。ルトスワフスキとエルガーは山響としては初演になることから、後半のシベリウス2番と併せて山響の新たなサウンドが生み出されると思います。ドヴォジンスキ氏の指揮は明確で、複雑な曲からくっきりとした音色を作り出しています。シベリウス2番はかつて村川氏、黒岩氏と名演を残した山響を代表するレパートリーですが、ドヴォジンスキが本番に向けてどのようなアプローチを取って行くのかが楽しみですね。
ようやく更新です。「事業仕分け」以降、それに伴う仕事が増え、これまでにない忙しさとなった今年の師走・・。
でも今日は久しぶりに音楽の楽しさを自らも感じられるような本番がありました。私が10年前から指揮者を務めている「山形市役所ウィンドアンサンブル」が市内の幼稚園、保育園を対象とした音楽鑑賞教室「ふれあいコンサート」が山形テルサで開催されました。この楽団は市職員により構成されていて、かつては市の直営として運営されていたこともある団体で、吹奏楽コンクールの全国大会にも2003、2004年と連続して出場しています。現在は組織改編により職員の自主的活動として位置づけられていますが、団員の皆さんは音楽と楽器をこよなく愛し、毎週練習に励んでいます。
今日の「ふれあいコンサート」は、この楽団が行う年度行事の中でも最も重要な演奏会で、山響で行っている音楽鑑賞教室と同様、子供たちへ音楽の楽しさを伝える素晴らしいコンサートです。演奏した曲はアニメ、ヒーローもの、童謡などで、約1時間のコンサートでも子供たちは飽きずに楽しんでいましたし、園児たちの先生方がヒーローに扮してのダンスもあり、ボルテージは最高でした!!また、今回は特別なコラボレーションとして、山響のメンバーも特別に参加し(私を含め5名)心を一つにして演奏を楽しむ事ができました。
来年度以降も、このような子供たちの満面の笑顔を見られるコンサートが1回でも多く開催され、音楽の楽しさが存分に伝えられるように願って止みません。
「事業仕分け」に対する音楽界の反応も、全国のオーケストラの理事会、ユニオンはもとより、オーケストラを支持して下さる方々や、聴衆、ファンの皆様へと大きな拡がりを見せています。科学技術分野に比べてやや出遅れた感はあるものの、今日は東京有楽町の東京国際フォーラムで音楽関係者による抗議の記者会見が行われ、山響音楽監督の飯森さん、札響音楽監督の尾高忠明さん、関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫さん、そして大御所の外山雄三さん、ピアニストの中村紘子さん、清水和音さん、作曲家の三枝成彰さん、声楽家の高 丈二さんの8名の音楽家が「友愛の精神は芸術から」と題する緊急アピールを行いました。新聞各社のインターネット版ではすでに報じられていて、明日の朝刊でも詳細が報じられる事でしょう。また、昨日、白鷹町で行われた「ハーモニーコンサート」でも、実行委員会の方々が自主的にこの件に関して文化庁へのメールを呼びかけるチラシをプログラムに折り込んでくれたり、さまざまな動きが起こっています。特に白鷹町のように、聴衆の方々による運動が起きた事は私たちにとって大変嬉しく、心強い事です。ユニオン・オーケストラ協議会では引き続き全国のオーケストラ・ユニオンが地域でのアピールがさらに深まるように呼びかけています。文化とオーケストラがこれからも発展し続けるように、私たちも努力を重ねて行きたいと思っています。
繰り返しになりますが、ご案内させていただきます。
このブログをお読みの皆様にも、ぜひ文化庁へのメールをお願いします。私たち実演家はもちろん、聴衆や音楽愛好家の皆様の多くの声が必要です。このままでは日本のオーケストラは消えてしまいます。要領は下記の通りです。ご質問がある方は、ぜひコメントまたはメールからお願いいたします。
どうかよろしくお願いいたします。
◆アドレス:nak-got@mext.go.jp 担当官:中川正春 後藤斎
●事業番号「4」事業名「文化関係1-独立行政法人日本芸術文化振興会」
*芸術創造活動特別推進事業助成金についてはこの事業です。
芸術創造活動特別推進事業助成金の削減・廃止に反対します。という一文を入れて構成してください。
●事業番号「5」事業名「文化関係2―芸術家の国際交流(学校への芸術家派遣)」
*本物の舞台芸術体験事業がこの項目です。
プロ・オーケストラによる本物の舞台芸術体験事業の廃止に反対します。という一文を入れて構成してください。
*注意点
・様式自由、必ず「件名(タイトル)」に事業番号、事業名を記入するして下さい。
・期限が12月15日まで
*参考ホームページ:文化庁http://www.bunka.go.jp/
公募・採用欄「行政刷新会議事業仕分け対象事業についての意見募集」(11月18日)
クライシス・・・・「危機」という意味です。
行政刷新会議「事業仕分け」が文化関係にも及び、文化予算が大幅に縮減または事業によっては廃止という答申が出され、全国のオーケストラが深刻な経営に陥る事が懸念されています。山響でも定期演奏会の開催に際して国から助成されていた「芸術創造活動特別推進事業助成金」の減額や、このブログでもたびたび取り上げた子供たちへの「本物の舞台芸術体験事業」が実質廃止という厳しい結果が出ています。仕分け人のコメントも、これまでの国の文化政策や成果を全く理解していない内容ばかりです。
文化庁にとっても各事業の予算削減の決定は本意ではなく、多くの国民の声を予算編成に反映させようとして、予算編成にいたる12月15日までにメールによる意見を文化庁が広く募集しています。科学技術方面ではノーベル賞受賞者が、スポーツ界ではオリンピックメダリストが、次々緊急声明を出す中、音楽界のアピール度は低いと言わざるを得ません。現在まで文化庁に1万2千件のメールが寄せられ、その内1万件が科学技術関連、2千件が教育関連で音楽関連はゼロに等しい状況です。
このブログをお読みの皆様にも、ぜひ文化庁へのメールをお願いします。私たち実演家はもちろん、聴衆や音楽愛好家の皆様の多くの声が必要です。このままでは日本のオーケストラは消えてしまいます。要領は下記の通りです。ご質問がある方は、ぜひコメントまたはメールからお願いいたします。
どうかよろしくお願いいたします。
◆アドレス:nak-got@mext.go.jp 担当官:中川正春 後藤斎
●事業番号「4」事業名「文化関係1-独立行政法人日本芸術文化振興会」
*芸術創造活動特別推進事業助成金についてはこの事業です。
芸術創造活動特別推進事業助成金の削減・廃止に反対します。という一文を入れて構成してください。
●事業番号「5」事業名「文化関係2―芸術家の国際交流(学校への芸術家派遣)」
*本物の舞台芸術体験事業がこの項目です。
プロ・オーケストラによる本物の舞台芸術体験事業の廃止に反対します。という一文を入れて構成してください。
*注意点
・様式自由、必ず「件名(タイトル)」に事業番号、事業名を記入するして下さい。
・期限が12月15日まで
*参考ホームページ:文化庁http://www.bunka.go.jp/
公募・採用欄「行政刷新会議事業仕分け対象事業についての意見募集」(11月18日)
Acting principal・・・・首席奏者が不在の時、同じセクションのメンバーが首席の代理を務める時にこの名称を使います。「Act」は役者の事を「Acter」と呼ぶ事からも解るように、自分が第三者としての役割を担当する事を指す言葉で、英語圏の一般企業でもよく使われます。
今日から山響首席トランペット奏者の井上直樹さんが休暇を取って不在なため、今日の本番(酒田市内の鑑賞教室)と明日のリハーサル、明後日の本番(南陽市民会館)では私が首席に座り、第一トランペットを担当します。以前のブログにも書いたように私は1991年4月から2001年8月頃まで、概ね第一トランペットを担当していて、(当時は金管に首席奏者を置いていませんでした)それ以降現在まで第二奏者を(時々第三パートも)務めています。大編成のオーケストラでは大抵4人のトランペット奏者を雇っているので、ローテーションも可能ですが、山響では二人だけで年間およそ150回の公演をこなします。今回は久しぶりに第一パートを担当しますが、感覚を思い出すのに若干時間がかかりました。また、パートナーがエキストラのために、特に今日はリハーサルなしのぶっつけ本番なので自分の事よりもエキストラの仕事ぶりが心配になったり、とても疲れました。明日からは新しいエキストラ奏者を起用し、ベートーヴェンの5番を演奏します。「運命」と呼ばれるこの曲は、1991年4月、退団した鬼頭伸明さんに替わって私が定期公演で始めて第一パートを担当し、その後2001年に村川先生が引退するまでの間、山響の金管セクションを牽引しつづけるきっかけとなった思い出の曲です。クラシック音楽に親しむ人であれば誰もが知る「運命」は、私にとってもさまざまな思いがある曲です。明日からわずかな間ではありますが、この曲を今の私らしく再創造する事ができれば、と思っています。
少し間が空きました・・・・11月はまるで1年分働いた気がします。
11月29日は私が指揮者を務めている「けやきの森ブリティッシュブラス」の秋の定期演奏会、「メアリーローズコンサート」が上山市体育文化センター・エコーホールで開催されました。このバンドは、良く知られた吹奏楽のフォーマットではなく、イギリスで発展してきた金管だけのアンサンブルです。少し前に、ユアン・マクレガーが主演し、イギリスの炭鉱町が舞台となった映画「ブラス」を見た方もいらっしゃるでしょう。「けやき」はそのスタイルで活動する数少ない団体の一つです。メンバーは教職員、会社員、学生などですが、特別に山響のホルン奏者で私の数少ない大切な友人の一人である岡本和也さんもテナーホーン奏者として参加しています。(山響で言えば、ヴィオラ首席の成田さんのようなポジションですね)ある日など、普通のホルンとナチュラルホルンを吹き分けた本番のあとで、「けやき」のリハーサルでテナーホーンを吹くという、普通のプロのホルン奏者は行わないような離れ業をやってのけたこともあり、とても頼りになる人です。また、私の学生時代からの親友で、山形でもレッスンや演奏活動でよく知られているチューバ奏者の西田 宏さんも賛助出演してくれて、盤石なサウンドができ上がりました。プログラムも親しみやすい曲が多くて、初めての方でも楽しんでいただけたと思います。メンバーは大半がウイークエンドプレイヤーなのに、大変素晴らしいサウンドを創ってくれました。
プログラムが全部終わり、カーテンコールで指揮台に戻ろうとした時、西田さんが突然指揮を始め、何が起きたのかと思った途端、「Happy Birthday」の演奏が始まり、23日だったはずの私の誕生日をもう一度祝ってくれ、とても驚き、嬉しくなりました・・・。でも「50歳」がみんなに知れ渡ってしまいましたね・・・・(^o^)
山形交響楽団第118回定期演奏会
1998年8月18日 19:00 山形県民会館
指揮:飯森範親
ピアノ:羽田健太郎
コープランド:アパラチアの春
ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー
バーバー:弦楽のためのアダージョ
ガーシュイン:交響的絵画「ポーギーとベス」
山響にとって初のオール・アメリカ音楽プログラム、しかも現音楽監督の飯森範親氏の山響初登場で、「ハネケン」の愛称で親しまれていた羽田健太郎さんもソリストとして登場する豪華な演奏会でした。飯森氏の第一印象は、とにかく指揮が分かりやすく動作がきれいで、演奏しやすかった事が思い出されます。彼は山響に対してどのような先入観を持っていたかは分かりませんが、予想よりはるかに良いオーケストラと感じたのでしょう。とにかく「素晴らしい」を連発し、短時間で自分のイメージするサウンドを創れた事で大きな手応えを感じていたようです。また、羽田さんも「良いオケじゃないか」と褒めて下さり、私が演奏した「ラプソディ・イン・ブルー」のトランペットソロを大変気に入って下さりました。この演奏会は残暑厳しい時期で、しかも空調が万全ではない山形県民会館での開催でしたが、会場は満員で、終演後の交流会では飯森、羽田両氏とも汗だくになりながらファンサービスを笑顔で行ってくれ、初のアメリカプロによる演奏会は大成功でした。この時点ではまだ将来の構想は全く白紙の状態でしたが、「飯森」という若手指揮者は実際はかなりの実力派指揮者であると強く印象付けられました・・・・。
山形交響楽団第100回定期演奏会
1995年6月18日 19:00 山形市民会館
指揮:村川千秋
ヴァイオリン:安永 徹
ピアノ:市野あゆみ
コープランド:市民のためのファンファーレ
メンデルスゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための二重協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第7番
創立から23年、遂に定期演奏会が100回を数えるまでになりました。当時は演奏会のプログラムは楽員の原案に基づいて作成されており、山響草創期のコンサートマスター(つまり、初代コンマス)であり、当時ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第一コンサートマスターであった安永 徹氏をゲストにお迎えする事は楽員からの強い要望で実現しました。また、ご夫人で安永氏の室内楽のパートナーとしても数多く共演しているピアノ奏者、市野あゆみ氏にも出演していただき、花を添えていただくこととなりました。記念すべき100回の演目としては多少シンプルなプログラムとも言えなくもないですが、安永氏が山響の弦楽器セクションにもたらした影響の大きさは筆舌に尽くしがたいものがありました。私たちがまだ知らなかった細かなテクニックや、響きの創り方、そして世界のマエストロと渡り合って音楽を奏でてきたその経験からくる深い音楽性は、わずかな時間に山響の弦楽セクションのレベルを大きく引き上げました。ベートーヴェンの7番ではコンサートマスターを務められ、ベルリンフィルでのリードぶりと寸分たがわないその姿は、まさに真の音楽家としての偉大さが漂っていました。安永氏はこのあとも1996年7月6日の第106回定期でモーツァルトとメンデルスゾーンを弾き振りをされたり、1999年7月18日の第123回定期では市野さんとベルリンフィルのソロチェロ奏者のクヴァント氏とともにベートーヴェンの三重協奏曲を、2001年6月21日の第135回定期でも市野さんとともにモーツァルトを、2003年8月23日の第151回定期では再びモーツァルトを弾き振りをされるなど、合計5回山響に来演されました。それ以降の共演が現在まで無いのは残念ですが、音楽的に大変純度が高い第100回定期演奏会であったと今も思います。
Hiroshi Sato Offizielle Website