1993/12/8 Mahler 5

山形交響楽団第91回定期演奏会
1993年12月8日 山形市民会館
指揮:山下一史

バーバー:弦楽のためのアダージョ
マーラー:交響曲第5番

私にとってこれまでで最も印象に残る演奏会の一つとなるのが、この第91回定期演奏会です。オーケストラのトランペット奏者にとってマーラーの5番のソロを演奏する事は、他のどのような曲を演奏するよりも重要であると言っても過言ではありません。初めてこの曲を知ったのは高校生の頃で、ショルティとシカゴ交響楽団の演奏で、ソロトランペットは最高のオーケストラ奏者と言われた伝説の名手、アドルフ・ハーセスでした。それ以来この曲とハーセスの演奏に夢中になり、シカゴ響のレコードを集めてはすり減るまで聴き込みました。また、シカゴ、フィラデルフィア、クリーブランドの金管セクションによる「ガブリエリの饗宴」(Sony Classical MHK62353)は毎日のように聴き、レコードが本当にすり減って聴けなくなりました・・・シカゴ交響楽団を始めとするアメリカのメジャー・オーケストラの来日公演を聴いた時の驚きと感激は大変大きなものでした。ハーセス率いるシカゴ交響楽団の金管セクションの演奏は、私の演奏家としてのDNAに深く刻み込まれています。
 
「プロオケ奏者としてマーラーの5番のソロをアドルフ・ハーセスのように吹く事」は私の人生の大きな目標となり、いつかその日が来る事を夢見て音大の学生時代、練習に励んだ事を思い出します。そして1993年の12月5日、リハーサル初日に第1楽章冒頭のソロを演奏した時の事は忘れられません。まさに「夢が現実」になった瞬間でした。8日の本番当日は極限まで緊張しましたが、冒頭のソロをうまく決める事ができ、約80分間の演奏時間もあっという間の出来事のようでした・・・この頃の山響は時々大編成のプログラムを取り上げ、ブルックナーの第7番(94/12/7 第96回定期)やボレロ、海などオールフレンチプロ(93/3/12 第88回定期)なども演奏していました。それぞれに素晴らしい演奏でしたが、この時代ではやはりこのマーラー第5番が私にとって忘れられない演奏会です・・・。