Freude

今日から客演指揮に藤岡幸夫さんをお迎えして、17、18日に行われる第209回定期公演のリハーサルが始まりました。相変わらずノリと流れの良い指揮ぶりは、山響からクリーンな響きを引き出しています。ウォルトンの交響曲を始めとするブリティッシュレパートリーは日本ではそれほど演奏される機会がありませんが、藤岡さんのリハーサルぶりからは今回も良い本番になる予感が漂います。

さて、ベートーヴェンの9番の話しでしたね。私たち日本人は一年ごとの区切りをとても大切にする民族です。借金や争いごと、良い事や悪い事全てを大晦日までに片づけて、元旦からは全てが新しくなったように振る舞う事を好みます。12月のことを「師走」と呼びますが、この一ヶ月は多くの方々にとって最大のイベントとされるクリスマスもあり、景気は良くないものの盛り上がりに遅れをとってはならぬとばかりに買い物をし、誰もがパーティーの主役になり切ります・・・そして、矢の如く過ぎていった一年を振り返り、「今年もあっという間だった・・・」とか言ってコタツでテレビを見ながら年末ジャンボ宝くじの当選を夢見たりします。そういう「一年の総決算」的なシチュエーションには一大叙情詩で大河ドラマ的なベートーヴェンの9番がピッタリハマるのかも知れません。シラーの歌詞を知らなくてもベートーヴェンが苦しみの中でこの9番を作曲した事も忘れてしまっても、全曲にわたって貫かれている「苦悩を伴った前進、そして訪れる歓喜」に自らの人生を重ね合わせる人は多いでしょう。この曲を演奏する時、客席のお客様の表情はまさにそんな雰囲気に満ちています。今日も日本のどこかで9番が演奏されていると思いますが、多くの人々に力を与えてくれるベートーヴェンの音楽のエネルギーはまさに「世界遺産」のようなものだと思います。Freude!