In memoriam: Adolph “Bud” Herseth 1921-2013

シカゴ交響楽団の伝説的トランペット奏者、アドルフ・ハーセス氏が4月13日にシカゴ郊外のオークパークにある自宅で亡くなりました。91歳でした。

ハーセス氏は1921年にミネソタで生まれ、バンドディレクターであった父親の影響でトランペットを始め、ボストンのニューイングランド音楽院で当時のボストン交響楽団首席のジョルジュ・マジェに学び、1948年にシカゴ交響楽団に首席奏者として入団します。以来、2001年に引退するまで50年以上その任にあり、幾多の名演を残し、世界中のトランペット奏者、金管奏者に莫大な影響を与え続けました。日本には1970年に日本フィルハーモニー交響楽団の招きで初来日し、小澤征爾氏の指揮でフンメルの協奏曲を演奏したほか、日本フィルの定期公演にもしばしば客演首席として出演されました。引退後は愛弟子の一人である戸部 豊氏の招きで武蔵野音楽大学の客員教授として指導にあたり、公開された金管セクションのワークショップには多くの金管奏者を始めとする関係者が集まり、教育者としてのハーセス氏の素晴らしさに触れることができました。引退以降も全米でレッスンやマスタークラスを続け、自らの経験を後進に伝えようと精力的な活動を続け、その親しみやすい人柄で多くの人々に愛されました。

私もトランペットを志した頃から、ハーセス氏が人生の目標でした。いつかこの日が来ることはわかっていましたが、とても大きな喪失感があります。今月から新たな仕事につき、トランペットとの向き合い方が変わったばかりのタイミングでこの知らせを受け、感慨深いものがあります。91年もの充実した人生を全うできたのだから、悲しむのではなく心からの感謝の気持ちを持って天国へお送りしなければいけませんね。本当にありがとうございました。天国でゆっくりお過ごし下さい。Thank you Bud!

Adolph Herseth