今年も残すところ今日と明日・・・いろいろな事がありましたが、今日はこれを書いておきたいと思います。
私は1986年からヤマハのトランペットで演奏活動を続けていて、現在も最新のYTR-9445CHS、9335CHSを中心に7台のヤマハトランペットを使用しています。ヤマハが管楽器の製作を本格的に始めたのは1965年頃で、トランペットの世界では1920年代から「標準器」として使われ続けてきたアメリカ製の楽器(私も学生時代はそれを使っていました)を凌ぐ楽器作りを目標に、プロジェクトが始まりました。始めは暗中模索に近いような状態でしたが、製作者のさまざまな苦労と時間をかけた戦いは、しだいに成果を表し始めます。そして、1970年頃に、初めてプロフェッショナル向けのトランペット「カスタム」シリーズを発表し、世界中のプレイヤーから注目されるようになります。さらに、1973年から並行してスタートしていたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団からの依頼、いわゆる伝統楽器の新製作のための研究も通常のトランペット製作へ大きな効果を与え、1980年代に発表された楽器は前述の「標準器」と並ぶ高い評価を得ます・・・
1986年、山響に入って3年目の私は、学生時代から使用していた「標準器」が老朽化した事から、それに代わるものを探していました。私の楽器は北海道時代の先生から受け継いだいわゆる「オールド」もので、製作されてからすでに25年近く経っていて、金管楽器としてはそろそろ寿命でした。最初は同じメーカーの新しい楽器を試しましたが、昔のサウンドとは違う響きで、私の感覚に合うものではありませんでした。そうした中、当時のヤマハスタッフから新型トランペットのテストと評価を依頼され、試作器の提供を受け試奏してみたところ、私の楽器がリニューアルされてきたような強い衝撃を感じ、すぐに自分の楽器を購入し、ヤマハのトランペット製作にも協力する事になり、現在に至っています。
1990年、ヤマハは全く新しいコンセプトに基づく新たなトランペットを発表します。「Xeno」(ゼノ)と名付けられたその楽器は、世界中のトランペット奏者から絶賛をもって迎えられ、ヤマハが会社を挙げて長年にわたり取り組んできた「標準器」を超える楽器が遂に誕生します。その楽器はさらに改良を加えられ、「現代の名器」として揺るぎない地位を確立します。そして今年2010年、その「Xeno」は誕生20周年を迎えました。それを記念してヤマハのホームページ内に特別に設けられたサイトがあり、これまでプロジェクトに携わってきた世界中のプレーヤーが祝福のメッセージを寄せています。もちろん、私のメッセージと写真もあります。1965年からこれまで、多くの人々とプレイヤーが協力して目指してきた大きな夢は、素晴らしい形で実現したのです。今年を振り返る時、私の音楽人生をいつも支えてくれたヤマハトランペットとそれに携わった全ての方々に心から感謝と祝福の念を持たずにはいられません。
http://jp.yamaha.com/products/musical-instruments/winds/trumpets/xeno_special/