The 10th anniversary

今週は山響の本拠ホールの一つである「山形テルサ」が開場10周年を迎え、明日から2日連続で記念公演です。かつて、私たちは定期公演のほとんどを山形市民会館で開催していて、良いとは言えない音響に苦労しながら将来の新ホール建設を夢見ていたものです。1962年に開場し、今日では老朽化した山形県民会館に替わる新文化施設は当初、1999年に開館する予定でしたが、様々な事情により計画が延期され、遂には凍結されてしまいました。この新文化施設の大ホールは2000席ほどの規模を持ち、2000年に開場した山形テルサと並んで山形駅の西側再開発のシンボル的な存在となる予定でした・・・

山形テルサは800席ほどのホールですが、音質はクリアで残響も多すぎず、現在の山響にとって好ましい環境であると言えるでしょう(個人的な観点かも知れませんが)もう少し・・・そう、1200席ほどであればなお良いとは思いますが・・・

山響のサウンドは、飯森監督が着任した影響がもちろん大きいですが、このホールで演奏するようになってから明らかに変わったと思います。以前は残響の乏しいホールで響きを作るためにいろいろ工夫をしてきましたが、テルサではホールが楽器のように共鳴するのでより自然な奏法で音楽を創る事ができるようになりました。それにしても10周年とは早いものです。この次の10年間、山響と山形はどのように変わってゆくのでしょうか・・・

Akita

山形も梅雨入りしました・・・昨年より少し遅いようですが、夜になるとわずかに寒さを感じるのは、今年の冷夏の予感なのでしょうか・・・。

先週末、12、13日とヤマハ秋田店でトランペットセミナーの講師として、たくさんの生徒達と「楽しい音楽の時間」を過しました。レッスンでは自分でもたくさん音を出すようにしているので、生徒にとっての見本になると同時に、自分にとっても基本練習をたっぷりできる良い機会です。レッスン後はヤマハのスタッフや友人達などと楽しく飲み会で盛り上がりました。スタッフの中にもかつての生徒もいて、一緒にお酒が飲めるようになった事を嬉しく思うと同時に、時の流れを感じる瞬間もありました。写真は秋田に住む私の舎弟で、大切な親友です。名前も同じ「ヒロシ」です。

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A hospital concert

今日の山響は大江町で2ステージの音楽鑑賞教室でした。昨日と違いホールでの演奏なので空調に助けられました・・・外ではとてもさわやかな風が漂っていましたが、午後になり風にわずかな重みを感じました。梅雨入りが近いのかも知れません。

山形に戻って、19時からは市立病院済生館内で私が常任指揮者を務めている山形市役所ウィンドアンサンブルによるホスピタルコンサートでした。近年は多くの病院で入院患者へのケアの一つとして院内コンサートを行う病院が増えてきています。3月に私が山形県立中央病院に入院していた時も、ヴォーカルユニットの演奏会を聴く事ができ、心と痛みが緩和され、その夜は良く眠れた事がありました。会場は4階の大会議室で、普段は医療ドラマに出てくるようなシビアな会議が行われているかのような雰囲気でしたが、音楽が響くと部屋の空気も一変します。今日は約30名ほどの入院患者さんと、付添のご家族、職員の方々が聴かれましたが、どなたも満足そうな顔をなさっていたのが印象的でした。また、小児科病棟に入院している子供も聴きにきてくれて、「崖の上のポニョ」を嬉しいそうに聴いていたのが忘れられません。音楽が持つパワーと、それが人と人をつないでゆく事の素晴らしさをあらためて感じた時間でした。

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The Nutcracker

今日は山形市内で音楽鑑賞教室でしたが、演奏会場の体育館はとにかく暑かったです・・・みんな、汗だくで演奏していました。今年度は体育館での演奏が例年より多く、今月から9月中旬まではとても過酷な状況での演奏が続きます。さすがに50歳を過ぎると辛くなってきますが、子供たちの笑顔を見ると、心は涼みます。

昨日は山形北高音楽科の定期演奏会でした。山響から参加した私たちは、午前、午後と山響の公演を終えてからの参加で、毎年このようなスケジュールになってしまいますが、生徒達と同じステージで音楽を創っていくのは大きな楽しみでもあります。ソリストとして演奏した生徒、合唱、そしてオーケストラ・・・どの演奏も集中度の高い、新鮮な音楽でした。私も参加したオーケストラの「くるみ割り人形」でも、本番の演奏はすばらしい出来でした。もちろん、まだ未熟な点もありますが、将来性を感じさせる瞬間がたくさんありました。3年生のトランペット専攻の生徒も、難易度の高いソロをキメてくれました。Bravo! 写真は、トランペットセクションです。本番後の解放感と達成感が伝わってきますね!

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Education

定期演奏会最終日の翌日は休日・・・これは山響の就業規則で定められていて、本番後に飲みすぎても充分な回復の時間があるという訳です・・・それは冗談ですが、実際にこの「公休日」を全くの休日として過せる日はほとんどありません。メンバーの多くはそれぞれに生徒のレッスンを持っていたり、学校での教育活動を行う者など、音楽家としてのもう一つの大切な仕事である「教育」に携わっています。私は山形北高に設置されている音楽科で20年以上にわたって講師として指導にあたっていて、今日は本番を明日に控えた音楽科の定期演奏会のリハーサルでした。この音楽科ではピアノ、声楽、管弦打楽器を専攻する生徒が約100人ほど勉強に励んでいて、卒業生の中には昨日のモーツァルト定期で素晴らしい独奏を行った牧さんのような優れたプレイヤーも数多くいます。明日の定期では、独奏、独唱や合唱、それにプログラムの最後にはオーケストラの演奏もあり、今年はチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の抜粋を演奏します。もちろん、講師である私を始め、山響のメンバーも10名ほど出演します。生徒達は日々研鑽を積んだ結果を精いっぱい発揮してくれますので、お時間がある方はぜひ明日の18時から山形テルサにお越し下さい!

Tsuruoka

モーツァルト定期二日目は、牧さんの出身地である鶴岡市での公演です。牧さんは山形北高音楽科を経て東京芸術大学を卒業し、山響へ入団されました。入団は私より一年ほど後だったと思いますが、それから長い間木管セクションの重要なプレイヤーとして活躍されています。演奏も素晴らしいですが、とても穏やかな人柄で、いつも周りの雰囲気を和ませるあたたかいキャラクターの持ち主です。

今回のモーツァルトの協奏曲は彼にとって2度目の演奏ですが、私は第二楽章で牧さんが穏やかに奏でる歌が大好きです。モーツァルトの音楽が持つすべてのエッセンスが込められて、すべての作品中、最も美しい音楽だと思います。これから本番ですが、今日もすてきな演奏をしてくれることでしょう。

Amadeus

モーツァルト定期、初日が終わりました。牧さんの演奏したクラリネット協奏曲は、どこまでも澄んだ美しい音色で、これぞ天上の音楽という響きでした。

私は楽屋でMacを開き、iPhotoから松下さんの写真を画面いっぱいに出して、一緒に楽屋モニターでクラリネット協奏曲を聴きました。きっと喜んでくれたでしょう・・・

10番と34番の交響曲も、とても素晴らしく、34番は演奏しながらとても楽しむ事ができました。明日は牧さんの出身地、鶴岡市で今日と同じプログラムです。庄内の皆さん、楽しみにしていて下さいね。

June

今日もまばゆい輝きにあふれた一日でした。昨年の山形県の梅雨入りは6月10日だったそうで、今年もその時期に梅雨入りするとしたら、このさわやかな風もそう長くは続かないのでしょうか・・・ようやく良い天気になったのに、雨期の湿気を思うと今から憂鬱ですね。

今日から始まったモーツァルト定期のリハーサルは、どの曲も個性的な美しさにあふれ、モーツァルトが天賦の才能を持った希有な作曲家だった事をあらためて感じさせてくれます。クラリネット協奏曲の第二楽章は、牧さんの美しい音色と文翔館の窓からさしこむ柔らかな光があいまって、微細できれいな響きが漂います・・・松下さん、聴いていましたか?

モーツァルトのリハーサル終了後は、会場を移して今月20日に予定されている金管五重奏のリハーサルがあり、この五人として初めて演奏するレパートリーを中心に念入りなリハーサルを行いました。実は、私は最近あまり良いコンディションではなかったのですが、大きく長いナチュラルトランペットをしっかり鳴らす練習をするうちにモダントランペットを演奏する状態も良くなってきて、五重奏のリハーサルではまだ完全ではないものの、かなりコンディションも良くなっていました。もっと良い音を出して梅雨が始まる前の軽やかな空気を美しい響きに変えたいですね!

写真:6月のザルツブルグ

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Mozart Sinfonien Urtext

6月になりました。抜けるような青空の下、衣替えした軽やかな服装で闊歩する姿は、新たな季節への希望に満ちているように感じます。

山響は明日から今年度最初のモーツァルト定期のリハーサルが始まります。今回は第10番、第34番の2曲の交響曲と山響クラリネット奏者の牧 慎一さんをソリストに、名作の一つであるクラリネット協奏曲が演奏されます。トランペットの出番はプログラム後半の交響曲第34番のみですが、初めて演奏する曲なのでスコアを睨みながら勉強してきました。Urtextというのは直訳すると「原本」ですが、今回のモーツアルトチクルスで使用する楽譜がべーレンライター社の新モーツァルト全集で、その楽譜にUrtextと記されています。以前はブライトコップ社の楽譜を使ってきましたが、このべーレンライター社の新全集は、手稿譜を一から見直し、新たな研究の成果なども考慮した現時点で最も信憑性の高い楽譜です。モーツァルトは溢れ出る楽想をものすごい早さで書いていったのでしょう。手稿譜はとにかく悪筆というか、読むのが困難なほどわかりにくいスコアです。私は1997年3月にロンドンの大英博物館でモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、バッハの書いた実物の楽譜を見ましたが、特にモーツァルトとベートーヴェンの楽譜は大変に解読困難でした。これではいろいろな解釈が出てくるのも仕方ありません。ブライトコップ版ではモーツァルトの交響曲は41曲とされており、それが長い間の認識でしたが、この新全集には新たに発見された曲や、改定されたもの等を含み50数曲の交響曲が収められています。写真はその新全集のスコア全巻で、誇り高く「原本」を名乗る唯一のテキストです。明日からのリハーサルで、このスコアがどのように「蘇生」されるのかとても楽しみです!

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