6月になりました。抜けるような青空の下、衣替えした軽やかな服装で闊歩する姿は、新たな季節への希望に満ちているように感じます。
山響は明日から今年度最初のモーツァルト定期のリハーサルが始まります。今回は第10番、第34番の2曲の交響曲と山響クラリネット奏者の牧 慎一さんをソリストに、名作の一つであるクラリネット協奏曲が演奏されます。トランペットの出番はプログラム後半の交響曲第34番のみですが、初めて演奏する曲なのでスコアを睨みながら勉強してきました。Urtextというのは直訳すると「原本」ですが、今回のモーツアルトチクルスで使用する楽譜がべーレンライター社の新モーツァルト全集で、その楽譜にUrtextと記されています。以前はブライトコップ社の楽譜を使ってきましたが、このべーレンライター社の新全集は、手稿譜を一から見直し、新たな研究の成果なども考慮した現時点で最も信憑性の高い楽譜です。モーツァルトは溢れ出る楽想をものすごい早さで書いていったのでしょう。手稿譜はとにかく悪筆というか、読むのが困難なほどわかりにくいスコアです。私は1997年3月にロンドンの大英博物館でモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、バッハの書いた実物の楽譜を見ましたが、特にモーツァルトとベートーヴェンの楽譜は大変に解読困難でした。これではいろいろな解釈が出てくるのも仕方ありません。ブライトコップ版ではモーツァルトの交響曲は41曲とされており、それが長い間の認識でしたが、この新全集には新たに発見された曲や、改定されたもの等を含み50数曲の交響曲が収められています。写真はその新全集のスコア全巻で、誇り高く「原本」を名乗る唯一のテキストです。明日からのリハーサルで、このスコアがどのように「蘇生」されるのかとても楽しみです!