R.I.P

偉大なマエストロが神に召されました…

クラウディオ・アバド氏が昨日、イタリアのボローニャにある自宅で80年の生涯を閉じました。トスカニーニに始まる現代イタリア指揮者の系譜において、オペラとシンフォニーの両面で常に先頭を走り続け、切れ味の良い指揮とそこから生まれるクリアな響きは独特の個性を放っていました…とりわけ、80年代にミラノ・スカラ座の音楽監督時代と、90年にカラヤン亡き後ベルリン・フィルの芸術監督を務めた二つの時代が輝かしく他を圧倒しています。

1981年にはミラノ・スカラ座の引越し公演でカルロス・クライバーと共に来日し、超絶的な名演を残した事が思い出されます。私は大学4年生でしたが、昨年惜しくも亡くなったNHK交響楽団トランペット奏者、祖堅方正さんの計らいにより、幸運にもヴェルディの「オテロ」「シモン・ボッカネグラ」プッチーニの「ラ・ボエーム」そしてヴェルディのレクイエムでバンダとして演奏に参加する事ができました。レクイエムのリハーサルでは1人づつ音をチェックされ、マエストロの目の前で緊張しながら演奏したことが懐かしい思い出です。この経験が私のプロ奏者としての原点になりました。アバド氏は、ベルリン時代の2000年に胃ガンに罹り、再起を危ぶまれながら何度も復帰し、そのたびに深い芸術を示してくれました。指揮者としてはまだやり残した事もあるでしょうが、長い間の闘病生活からようやく解放され、トスカニーニやカンテルリ、そしてジュリーニ達が待つ天国で安らかに過ごされることを心から祈ります。

R.I.P (Requiescat in Pace, ラテン語で「安らかに眠れ」)

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