Ohfunato

三月の震災以来、その状況が特に心配された地域の一つである大船渡市でスクールコンサートを開催してきました。この公演は東北電力の主催によるもので、昨年度までは年間約10数公演を行ってきましたが、今年度は震災の影響で公演数が激減し、今年度は今日のコンサートのみです。当然ながら東北全域に電気を供給している東北電力も、震災による被災企業で、今も電力供給の完全復旧を目指して日夜奮闘の日々を送られています。この三陸地域は、東北電力のコンサートを始め、文化庁公演などでも再三にわたって訪れてきました。震災以来、報道では見てきましたが、市内沿岸地域の状態には言葉が出ませんでした…ナビゲーションにはいろんなお店や観光地が表示されるのに、実際の街は更地のようになっていて、延々と瓦礫が積み上げられています。アーティストやスポーツ選手などは、コンサートやイベントで「被災地の皆さんに元気を与える…」という表現を使う方が多いようですが、そんな「与える」なんてとても私には言えません…聴いてくださる方々がこの状況下で私たちの演奏を「受入れて」くれるのかどうか、とても不安になります。会場の大船渡中学校に着くと、生徒たちが笑顔で迎えてくれます。先生方も元気いっぱいで、地域の皆さんの表情からも、不安と苦悩の中、私たちの演奏を心待ちにしてくださった様子が伝わってきます。コンサートが始まるとオーケストラも渾身の演奏でそれに応え、会場は暖かな雰囲気に包まれました。そう、聴いて下さった方々は私たちの音楽を確かに「受け入れ」そして「楽しんで」いただけたのです。復興にはまだまだ時間を要するのでしょうが、わずかな時間でも音楽がその助けになれば、私たちも復興への力を共にしている、と感じることができるかもしれません。いつかまた、皆さんの前で演奏したいとの思いを強く感じながら会場を後にしました。