私がブルックナーの交響曲第7番を初めてライブで聴いたのは、1986年のシカゴ交響楽団来日公演で、会場は昭和女子大人見記念講堂でした。当時は「神様」首席トランペット奏者アドルフ・ハーセスが65歳で最高潮の時期でしたし、伝説的なチューバ奏者のアーノルド・ジェイコブズも健在でした。そして指揮者はサー・ゲオルグ・ショルティ・・・本当に素晴らしかったです。アメリカのオーケストラはステージで「ひな壇」を使わないで全員平場で演奏する事が多く(1990年代の山響もそうしていた時期がありました)客席の場所によっては金管セクションが見にくく、ハーセス氏が吹いている姿を何とか見たくて空いている席を探して移った記憶があります。
シカゴ響の録音は主にデッカレーベルから出ていて、ソリッドでクリアな録音が特徴でした。それだけだとシカゴの音は堅く聞こえがちですが、ライブで聴くとその柔らかなサウンドに驚きます。ピッチが440と低く、響きにもある種の穏やかさがある事も影響していると思いますが、どんなに大きな音でも余裕があるのと、ピアニシモが絶妙な美しさ!まるでコンサートホール備え付けのパイプオルガンが全開で鳴り響いているような感じでした。この空気感は録音には入りきらないですね。
第2楽章ではワーグナーチューバが大活躍しますが、それを支えるコントラバスチューバを演奏するジェイコブズのゆったりヴィブラートのかかった歌い方が今も耳に残っています。そして金管セクションだけでなく、コンサートマスター並みの影響力を持つハーセスの演奏・・・この演奏でそれまであまり好きではなかったブルックナーがとても好きになりました。シカゴ響のブルックナー7番は、BBCプロムスでのライヴ演奏(確か1970年代の後半の演奏だったと思います)も市販されていて(CSのクラシカジャパンでも時々放送されています)こちらももの凄い演奏です。カラヤンもベームも素晴らしいと思いますが、私はやはりシカゴ響の演奏が1番ですね。