三日間のタフなレコーディングセッションが終わりました。これまでのセッションは二日間で仕上げていましたが、今回はたっぷり時間をとり、余裕をもって収録する事ができました。先日の定期で素晴らしい演奏を聴かせてくれたワーグナーチューバ隊は、今回さらに集中度の高い音楽を出してくれ、数あるブルックナー7番のCDと比較しても最高ランクの出来栄えです。収録したテイクの数は200以上にもなり、上手く行かなく何度も演奏しなければならない時でも、マエストロ飯森はリラックスした雰囲気を漂わせ、楽員を信じている感じが伝わってきます…
私が始めてレコーディングを経験したのは学生時代でしたが、クラシックではなくてカラオケを作る仕事だったと思います….よく覚えていませんが。クラシックの仕事は1982年、東京佼成ウィンドオーケストラのレコーディングでした。スタジオに入りストラヴィンスキーのサーカスポルカ、バーバーのコマンドマーチ、サン・サーンスのマーチでトランペットとコルネットを演奏したのは良く覚えています。隣の席には長くベルリン・ドイツ・オペラに在籍し、帰国したばかりの田宮堅二さん(現在は桐朋学園大学教授)がいて、休憩時間には奏法や音楽についてたくさんアドバイスを頂いたりしました。
山響に入ってからはレコーディングよりテレビの収録が今よりとても多く、90年代初期は定期を毎回収録して放送していました。今でもビデオテープが残っていますが、懐かしい顔や自分の若さに吹き出しそうになります。
飯森さんが2004年に着任してからは本格的なレコーディングが増え、山響の新しいサウンドが広く知られるようになります。オーケストラのスキルを上げるには、レコーディングとツアーをたくさんするべきだと言われますが、マイクの前で演奏し、ディレクターにダメ出しされ、プレイバックを聴いて納得し再び演奏することを繰り返すと確かにアンサンブルの精度は高まります。また、プレッシャーのかかるパッセージを自分が上手く演奏できても誰かのミスでやり直す事も良くありますが、そんな時でも寛容さとタフな神経が要求されます。
これまでたくさんの曲をレコーディングしてきましたが、私にとっては今回のセッションが最後です。いつもベストを尽してはいますが、自分の全てを出し切るつもりで演奏しました。素晴らしい山響の演奏の中から私の渾身の響きを見つけてくれると嬉しいですね…
本当に、ほんとうにお疲れさまでした。
オーケストラ奏者として、最後の活動となる1つ1つに思いをこめ、納得しながらご卒業に向かっていらっしゃるSatohさん。Essayの文から、そのお気持ちが伝わってきますね。
先日のコンサートで、素晴らしい感動をいただいたブルックナーの7番。CDを聴くときには、ステージ上で演奏されていたSatohさんのお姿を思い出しそうです。完成を楽しみにしています。